在宅治療の取り組み
65歳以上の人が人口の30%を超え、団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」に対応するため、国は住み慣れた地域や在宅で支える体制への転換を打ち出しました。
しかし今後、高齢化の進展に伴い、医療や介護を必要とされる方がますます増加していく状況で、現在の我が国の医療・介護サービスの供給体制に不安が生じております。
「病院完結型」から「連携による地域完結型」へと医療の転換が進む中で、在宅における疾患の制御、機能障害やADLの維持・向上を図りつつ最良の生活を保つことができるような支援サービスが求められております。
このようななかで、わたしたちアミュー治療院およびアミュー在宅マッサージでは、伝統療法である鍼灸マッサージを在宅治療のひとつの手段としてご活用いただくため、微力ながら日々活動しているところであります。
そしてわたしたちは、「2025年問題」の解決策である地域包括ケアシステムの構築に積極的に関わり、連携してこの問題に取り組んでいきたいと考えております。
鍼灸による在宅療養
鍼灸治療は身体の自らの「治癒力」に働きかけ、それを強くする治療法です。
人間は元々病気や怪我を自分で治す力を持っていて、鍼灸はそれらを上手く発動できるように「きっかけ」を与えているだけなのです。つまり鍼灸治療で治すのではなく、自然治癒力をより高めることにより自ら良好な状態に身体を持っていくことが、鍼灸治療の特徴です
また薬などを使わない身体に優しい安全な治療法となりますので、高齢者などの長期にわたる在宅療養には適した治療法と言えます。
1.鍼灸の対象
鍼灸治療の対象となる疾病は、主として神経痛、リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症及び頸椎捻挫後遺症等の慢性的な(必ずしも慢性期に至らない場合もある)疼痛を主訴とする疾患となります。
2.鍼灸の適応症状と効果
痛みの緩和
はりきゅうの刺激により痛みを抑えるホルモン(内因性オピオイド)が分泌され痛みが緩和されます。
また、痛みを脳に伝える神経経路をブロックすることによる鎮痛効果もあります。
血行促進
はりきゅうの刺激により血管の神経が活発化し血行が促進されます。
そして、血行が促進されることにより痛みの原因物質を老廃物として流す作用があります。
筋緊張の緩和
血行が促進され、栄養が送られることにより傷ついた筋肉や神経の修復が早まり、硬くこり固まっている筋肉が柔らかくなります。
自律神経の調整
はりきゅうの刺激には、神経を調節する作用があります。
自律神経が内臓や血圧に作用し崩れたバランスを正常な状態に整えます。
免疫力の向上
はりきゅうの刺激により白血球が増加し、免疫力や自然治癒力が高まります。
その他
不眠、呼吸苦、便秘、浮腫、褥瘡等の長期療養から引き起こされる症状に対する予防改善を促します。
3.鍼灸治療の課題
保険による療養費の支給対象疾患は、神経痛、リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症及び頸椎捻挫後遺症等の慢性的な(必ずしも慢性期に至らない場合もある)疼痛を主訴とする疾患となります。
このため、先に述べた在宅における様々な適応症状と効果が期待できるものの、療養費の支給対象は限定的なものとなっております。
マッサージによる在宅療養
1.医療マッサージの対象
保険による療養費の支給対象となる適応症は、一律に傷病名を限定せず、筋麻痺・関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要と判断されるものについて対象とされております。
脱臼や骨折はもとより、脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛などの症例に対しても医師の同意により必要性が認められる場合は対象となり、医師の治療との併用も認められております。
2.医療マッサージの効果
筋麻痺の予防と改善
関節拘縮の予防と改善
筋力の維持・増強
疼痛の緩和
血液・リンパの循環改善および心肺機能の改善
呼吸苦、便秘、浮腫に対する予防と改善
褥瘡の予防と改善
心理的鎮静効果
介護予防に対する鍼灸マッサージの有用性
1.介護予防としての運動器疾患対策に対する活用
骨折(大腿骨頚部骨折、脊椎椎体骨折)、膝痛(変形性膝関節症)及び腰痛(腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症性脊椎椎体骨折、変形性腰椎症)等の運動器疾患は、痛み等による身体活動の低下をもたらし、その結果体重の増加や筋肉量・筋力の低下を来す要因となります。更には、外出頻度の低下等により閉じこもりや精神面での悪影響にもつながり、これら悪循環に陥ることが生活機能全般の低下をもたらす大きな要因となります。
運動器疾患は高齢になるにつれて有病率が増加し、従って運動器疾患対策が最も有効な介護予防となります。
つまり痛みが介護予防の大きなリスクとなり得るわけですが、痛みの治療・管理は鍼灸マッサージが最も意識して治療する分野です。
痛みを上手にコントロールすることが、運動器疾患から生活機能全般の低下をもたらす悪循環のスパイラルを回避する有効な手段となり得ます。
2.介護予防における痛みの管理の重要性
運動器疾患対策としてリハビリ(トレーニング)を行えば関節痛や筋肉痛などの痛みが出ます。患部に痛みがあれば機能訓練をしようとしても患者は身体を動かしたがらなくなります。つまり痛みが出れば高齢者のトレーニングは継続が難しくなります。
この痛みが介護予防の大きなリスクとなり得るわけですが、鍼灸マッサージ治療を併用することにより、利用者の体調変化や痛み等をコントロールしながらトレーニング意欲を持続させ治療継続をすることができます。
鍼灸とマッサージ・変形徒手矯正術・機能訓練(リハビリ)を患者の症状にあわせ適宜組み合わせることは、介護予防において大きな相乗的治療効果が期待できるものと考えます。